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尾燈去ル

生きるための記録。

慢性骨髄性白血病 chronic myeloid leukemia: CML

17歳のプロボクサー服部海斗さん死去/ファイト/デイリースポーツ online

白血病で闘病していた17歳のプロボクサー・服部海斗さん(大成ジム)が24日午前11時、慢性骨髄性白血病のため、大阪市立大学医学部付属病院で死去した。

 

病因・病態

慢性骨髄性白血病は造血幹細胞レベルの未分化な細胞に染色体転座t(9;22)(q34;q11.2)が起こることで後天的に発症する(t(9;22)によって形成された派生染色体22q-をPhiladelphia(Ph)染色体という)。放射性被曝などが原因となるが、多くの症例で原因は明らかではない。

Ph染色体上では22番染色体上のBCR遺伝子と9番染色体上のABL遺伝子が融合遺伝子BCR-ABLを形成する。これは恒常的活性型チロシンキナーゼとしてSTAT, PI3K/Akt, Ras/MAPK などの細胞内シグナル伝達分子を活性化して、CML細胞に過剰な増殖・生存をもたらす。結果、骨髄はCML細胞で占拠される。いずれ末梢血中にもCML細胞が流出するようになる。

経過・症候

CMLの慢性期(chronic phase;CP)は自覚症状が乏しく、検診などで偶然発見されることも多い。白血球数が増加すると全身倦怠感、脾腫による腹部膨満感、高ヒスタミン血症に伴う皮膚掻痒、胃潰瘍もみられる。

移行期(accelerated phase;AP)に進行すると、肝脾腫の増悪、発熱などの症状が出現する。急性転化期(blastic crisis;BC)では急性白血病と同様に骨髄不全による感染症、出血がみられる。

診断・検査

慢性期では末梢血中に1.2-100万/μLの白血球増加が認められる。慢性期のCML細胞は分化能を有するため、骨髄球から分葉球をピークとする種々の分化段階の顆粒球系細胞が増加し(→白血病裂孔は生じない)、骨髄芽球の比率は5%以内である。好塩基球数はほぼ全例で増加し、しばしば好酸球増加も伴う。軽度の貧血が見られ、血小板数は30-50%の症例で増加する。骨髄は低形成で、分化傾向を示す顆粒球系細胞が著増している。赤血球系の造血は一般的に抑制されている。生化学検査ではLDH, 尿酸, ビタミンB12が高値を示す。好中球アルカリホスファターゼ指数(NAP score)は低値である。

病気進行を診断するための所見として、

WBC↑(>1万/μL), 治療抵抗性の脾腫のどちらかもしくは両者の持続や悪化

②治療でコントロール出来ないPlt↑(>100万/μL)

③治療と無関係なPlt↓(<10万/μL)

④付加的染色体異常の出現

⑤末梢血または骨髄での芽球比率の増加(>10%)あるいは髄外での芽球増殖 がある。

①~④は慢性期から移行期への進行, ⑤⑥は移行期から急性転化期への進行の診断に重要である。

また、移行期/急性転化期になるとNAP scoreは上昇する。

治療・予後

慢性期(CP)

同種造血幹細胞移植術(alloHSCT)は、CMLを治療できる唯一の治療法であり、長期生存率はおおむね50-70%, 再発率は20%未満である。しかし、移植時点での病期、年齢などにより治療成績が大きく異なり、移植関連死亡問題となる。

BCL-ABL阻害薬 イマチニブは、BCR-ABLのシグナルを遮断する。イマチニブを未治療の慢性期CML患者に投与した際の8年時点の全生存率は85%(CML関連死亡は7%のみ), 病期進行のない生存が92%ときわめて良好な成績である。薬剤中止により多くの症例が再発することから、BCR-ABL阻害薬は継続する必要がある。

初期の慢性期CML患者に対してはまず薬物治療を優先すべきである。しかし、十分な薬物治療を行っても細胞遺伝学的効果が得られない患者(特に既存チロシンキナーゼ阻害薬が効かないT315I変異を有する症例)に対しては非血縁者間移植も含めて造血幹細胞移植を検討する。

移行期/急性転化期(AP/BC)

移行期/急性転化期CMLにはBCR-ABL阻害薬の効果は限定的である。移植可能例にはalloHSCTが推奨される。急性転化期CMLには移植前に多剤併用化学療法が必要である。

 

・・・

 

白血病と闘い亡くなられた格闘家というと、K-1格闘家のアンディ・フグ氏が思い出される。急性前骨髄性白血病(APL)だった。

服部海斗さんの場合CMLだが、昨年3月移行にalloHSCTを行われたと記事にあるので、病気発覚から1年も絶たないうちに亡くなられたということになる。病気発覚の時点で既に移行期にあったものと思われる。

なおJSHCTによると、alloHSCTを行った16歳以上40歳未満のCML-AP患者における生存率(n=43)は、1年生存率 74.4%, 5年生存率 62.2% となっている。(参照: http://www.jshct.com/report_recent/3-3-4.pdf)