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尾燈去ル

生きるための記録。

新潟から宗谷岬へ。自転車旅(15日目)

AM 4:30。ノシャップ公園で起床。鹿が近づいてきて草を食っている。

あらためて日本の最北の地でシカとともに野宿をするというシュールさを確認しつつ、顔を洗い覚醒める。

静かな朝である。

 

15日目

朝食を買って、フェリーターミナルにはAM 5:50に着く。AM 7:15の第一便で利尻島を目指す。

快晴。利尻山がよく見える。遠目に見ると、正に"利尻富士"だ。

やがて、利尻島の裏から礼文島が現れる。船の進行とともに両者は次第に分離していく。

また、近づくにつれ利尻山には頂の尖った岩肌が見れ取れる。遠目に見た"利尻富士"とは全く異なる印象を受ける。後に聞いた話だと、利尻山は見る角度によって全く異なった姿を見せることで有名なのだという。

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AM 8:55、鴛泊港到着。昨晩予約した「眉倶楽部」へ向かう。ネット情報によると、旅人には名の知れた宿だそうで、ワクワクしながら向かう。

年季の入った隠れ家バー的な装いを入っていき、「こんにちは」と挨拶をすると職人風のマスターが出てきた(ネットに誰かがあげていた写真通りの)。

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とりあえずゆっくり、ということになって、コーヒーを飲みながら島の名所を簡単に教えてもらう。また、居合わせたバイカーと語らう。自分はすぐに、そこに旅人の居場所・帰る場所という安心感を感じ取った。

旅をしていると、時々こういう妙に居心地のよい宿に出会うことがある。ソウルの日本人宿だったり、フエの日本人宿だったり。あるいは、この旅の中で言うなら大潟の道の駅だったり。一言で言えば、雰囲気だ。それは、その場にたまたま居合わせた旅人たちとの一期一会の出会いを含んでいる。そして、そのとき自分は旅の中で、ただの観察者を超えて一人の(場の)創造者になれる。

 

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マスターにもらった観光パンフレット片手に島を時計回りに走る。

まずは、フェリーターミナルのすぐ傍の海に張り出すベシ岬へと向かう。岬の高台に登ると、港や町を一望できる。利尻山は全てを見守るように雄大な姿を見せる。港があり町があり、そこに人がいて、山があるという箱庭的光景。利尻にとっての利尻富士を日本にとっての富士山と重ねあわせるならば、まるでそれは"一つの日本"を見ているようでもあった。

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お昼も近くなってきたので、鴛泊港内の漁業組合の店で弁当を買う。

野塚岬の展望台で、「さて弁当を食おう」と思っていると、同じフェリーに乗っていた女性のチャリダーがいた。彼女もちょうど昼食をとるところのようだったので話しかけてみると、旭川からの一人旅だという。雑談をして別れたのだが、彼女も時計回りに島を一周しているものだから、このあと彼女とは何度も何度も再会してその度に言葉を交わした。

 

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オタトマリ沼にやってきた。あの「白い恋人」のパッケージの写真の場所、と言えば知らない人はいないだろう場所。

さぞ、混んでいるだろうな…と思いきや、人はまったく無し。売店の人に聞くと、観光バスは数十分置きにやってくるもので、ちょうど間の時間に当たったらしい。ラッキー。

快晴で雲のほとんど掛からない奇跡的な利尻山を、思う存分堪能する。スイスアルプスのように美しく、静かで、そして心地が良い。このオタトマリ沼からの利尻山は、間違いなくこの旅の中で見た最も美しい光景の一つだった。

 

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仙法志御崎公園にはアザラシがいた。想像とかなり違ったけれど、確かにいた笑

さて、沓形、つまり島の反対へくると利尻山は雲に覆われてしまっていた。昨日、一昨日での札幌→稚内の移動も疲れもあって、道中かなりキツイ。景色もしだいに原野の単調なものになってくる。

PM 5:30近く。ようやく「眉倶楽部」へと戻る。戻るとマスターが入り口の所にいて、「サイクリングロードは走ってきたか?」と尋ねる。なにやら58億円掛けて整備したというやつだそうで。「いや」と言って、かなり疲労困憊なことを伝えたのだが、マスターの強い勧めもあって結局また走りだすことにした。

 

マスターの教えてもらった通り、お昼に弁当を食べた野塚展望台の裏側に、確かにサイクリングロードの入口があった。森を切り開いたゆるやかな坂道が延々続く。58億円掛かったというもの納得。今は概ね地元民の散歩道になっているようだけれど。

緑色の橋を何本か渡る。見下ろす利尻の町。見上げる利尻山は、町の道路を走っていた時よりもずっと迫ってきていて、夕日に映える。自転車のブレーキがほぼ完全にすり減っていたので、帰りの下り道は怖かった。結局、50分ほどでまた「眉倶楽部」に帰れた。

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宿に戻ると、マスターから話を聞いていた某大学院の同い年の学生と、もう一人旅人が話し込んでいた。自分もそこに混じって、タバコをプカプカとやりながら話し込んでいると、英語を話す女性が訪ねてきた。

彼女は韓国人の女子大生で一人旅をしているという。はじめ、大学院生が対応していたのだけれど、マスターの夕食作りを手伝うとかで、英語が多少はできる自分が応対をすることになった。

彼女は大学4年生で経営学を学び、ホテル業界を目指していると言った。ヨーロッパを10ヶ国一人旅して「旅は人を変える力がある」と知ったからだそうだ。行く行くは自分のブランドの旅館(ホテルグループ?)を持ちたい、とも言っていた。知的で真っ直ぐな目が、日本人とはどこか違っていて魅力的に思えた。

マスターの作った夕食をみんなで食べた。サケだったか何かの焼き魚を食ったのだけれど、他の思い出が多すぎてよく覚えていない。けれど、旨かったことだけは覚えている。食事を終えると韓国人の女子大生は泊まっているホテルへ戻っていき、自分はマスターやほかの旅人たちと、またウイスキー片手に語り合った。

マスターは、ふと自分に「絶対に忘れない顔だ」と言った。翌朝、顔を洗うときにまた同じことを言ったので、「どうしてですか?」と聞くと、「子どもの時から同じ顔をしてたでしょ?」と。童顔という意味だろうか。分かったような分からないような…でも何か凄くうれしかった。

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PM 10:00になってマスターがお風呂に連れて行ってくれた。他の皆は疲れていたので、マスターと二人きり。温泉につくと、誰もいないロビーを抜けて、ぬるくなった湯に浸かって、そのまま出てきた。(色々めちゃくちゃな話である笑)

帰り道。童心からの悪事的な少し興奮した気分を夜の静かな町に落ち着かされながら、マスターと二人、自転車を漕いだ。宿に戻った頃には、もうPM 11:00近くだったろうか、明日はAM 8:30のフェリー。宿の2階に上がると、すぐに布団に潜り込んだ。

思い出だらけの今日の出来事を一つ一つなぞりながら、夢に落ちて行った。

 

・走行時間 5h00m00s(推定)

・走行距離 60.00km(推定)

・積算距離 1430.5km